東 真⾥江

表/裏 25

2024

Other

H1000 × W1000 cm

ギャラリーモリタ+画廊香月

Detail
SECTION:
Galleries
BOOTH:
W33

Artist Profile

脆さや儚さと共にある力強い生命、死にゆく生命という現象に打たれる。
行き場のない葛藤や衝動、自身の苦しさが、さし迫って来て、壊れてしまいそうでした。どうにか事態を好転させようと、絵を描いたのが私の始まりです。それまで美術は義務教育で習った程度で、自身で絵を描くことも無く、アートにも関心がある方ではありませんでした。

必要に駆られて描くことになりましたが、描くことで、自身を知り、解かれて、そして許していくようでした。これまでに感じたことのない歓喜を覚えました。また、知らない自分(自分とも言えないような私を超えた何か)と出会うことが面白く、ますます描くことにのめり込んでいきました。救われると同時に、未知を切り開いて進んでいくような、言葉にし難い体験が、私の生きる世界を拡げていくような実感がありました。そうして、私は一生をかけて自身の可能性を拡げたいと、覚悟を決めたのでした。

絵に現れているのは、私の人生そのものでしょうが、その中でも看護師として経験したことは大きく影響しているように思います。特に五年ほど手術室で勤務していた経験は、私の人生で最も重要な時間でした。手術に携わり初めて見た人体は驚くほど精密で、驚くほど脆いものでした。それは私にとって強烈な体験でした。他者の体はもちろん、私自身の体もそうであること。植物や動物やあらゆる命も、この世界も同様であること。その不思議さ、恐ろしさ、素晴らしさが差し迫ってきて、全身を打たれるようでした。死を受け入れて生きる人の様子、治療にともなって回復していく姿、傷が治癒していく過程などを見ていると、その命が途轍もなく鮮やかに感じられたのでした。そういう脆さや弱さと共にある力強い生命が、とてもうつくしく感じられたのです。

世の中には、分かりやすい二者択一的な考えが多くありますが、何事にも捉えきれないほど様々な面があるのではないでしょうか。 答えがない中で、型に押し込めず矛盾を持ち続けること、描き続けることが私の問いでもあります。表裏、善悪、美醜、生死… 一見相反することも共存するような、そういう血の通った表現をしたい。そう思うのは、残酷なこの世界を肯定したいからかもしれません。生命や世界の、ありのままこそがうつくしいとも思うからです。

ギャラリーモリタ+画廊香月

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W33