2015
創設の年
ART FAIR ASIA FUKUOKA、誕生
2015年、AFAFは34歳で早逝した故・西牟田一広さんとの出会いを契機に誕生しました。西鉄グループが新しい企画を模索していると知り、当時話題となっていた東京・アグネスホテルでのアートフェアの事例を提案したところ、即座に賛同が得られ、わずか半年後にはソラリア西鉄ホテルでの開催が決定。ノウハウもない中で、超短期間の準備が始まりました。
参加ギャラリーは30未満にとどまりましたが、海外の大規模フェアにも参加していたミヅマアートギャラリーをはじめ有力ギャラリーが加わり、福岡発の新しいフェアに寄せられる大きな期待を実感しました。
同時に、国内外のギャラリーからは、日本のアートマーケットの弱さや海外とのネットワーク構築の必要性も指摘されていました。
フェア名を「ART FAIR ASIA FUKUOKA」としたのは、福岡を単なる国内向けのフェアではなく、「アジアに開かれた国際的なフェア」と位置づけたかったからです。当時、「アジア」や「インターナショナル」を冠したフェアは存在せず、海外と価値観を共有できる新しい場をつくりたいという強い想いが込められています。
さらに地域の特色を象徴する存在として「九州派」を特集しました。「地域の表現を徹底的に掘り下げることでこそ、世界に通じる価値を生み出せる」という信念のもと、国際的に再評価されつつあった九州派を紹介し、地域と世界をつなぐ役割を担ったのです。
同年12月には台湾「アート高雄」を視察し、行政と連携した芸術特区の姿に触れたことで、福岡を“現代アートの玄関口”とする未来像をより鮮明に描くようになりました。
2016
2度目の開催
ホテルオークラでの開催
アートフェアは毎年継続して開催されることで、参加するギャラリーからの信頼を得ることができます。2016年も当然ソラリア西鉄ホテルでの開催を予定していましたが、リニューアル工事のため使用できないとの知らせを受け、急遽新たな会場を探すことになりました。
当時、福岡のホテル業界は活況を極めており、1フロアを丸ごと借りることは不可能に近い状況でした。さらに、アートの力や可能性を信じる人もほとんど存在していなかった時代だったと言えます。
「一流のホテルやレストランには一流のアートがある」
そう考え、私たちはアジア美術館に隣接する「HOTEL OKURA FUKUOKA」しかないと決断しました。しかし、担当者の方々からは「前例がない」と何度も断られました。今思えば、当然の反応だったかもしれません。
それでも、不可能を可能にするのもアートの力です。諦めずにアプローチを重ね、市議会議員・橋田氏の協力を得て、当時の水島社長に直接思いを伝える機会を得ました。アートの持つ力とフェアの意義を粘り強く語り、ついにGOサインをいただくことができたのです。こうしてAFAFは、新たな舞台での開催へと歩を進めました。
2017
九州派講演会開催
広がる仲間と学びの場
この年も会場はホテルオークラ。福岡市役所や県庁の若手職員が手弁当で協力してくれました。私たちは「アートは敷居が高い」という印象を払拭し、気軽に楽しめる場をつくりたいと考えていました。そうした思いから、けやき通りのギャラリーモリタを拠点に「ギャラリー梯子酒」が前年より始まりました。このイベントは次第に市民に広く受け入れられ、関わったスタッフの多くがAFAFを支え続けています。なかには自らアートをコレクションし、その魅力を周囲に広める人も現れました。
また、九州派を広める活動の一環として、アジア美術館で学芸員・山口洋三氏を招いた講演会を開催。市民に開かれた学びの場も誕生しました。さらにこの年、福岡で行われた日本シリーズでは横浜ベイスターズが出場。シリーズ直前、ベイスターズファンの二見広太氏がギャラリーを訪れたことをきっかけに、現在はAFAFの運営を担う株式会社TODOROKIの井上雅也氏が加わる縁が生まれました。翌年のボランティア参加を経て、AFAFは「規模の拡大」ではなく「国際的価値観の導入」を目指す方向性を強めていきます。
2018
Art Scenes開始の年
初めてのオンライン販売への挑戦
2018年、AFAFは4回目の開催を迎えました。会場はホテルオークラ、参加ギャラリーは37。九州の画廊に加え、東京・大阪、さらに韓国・台湾・シンガポール・香港からも出展があり、国際色はますます強まりました。
この年の大きな特徴は、初めてオンライン販売を導入したことです。「Art Scenes」と連携し、会期前から出展ギャラリーの情報をウェブ上で公開。会場に来られない人でもオンラインで作品を購入できる仕組みを整え、アートに触れる機会を大きく広げる転機となりました。
またこの頃、私たちは世界的アートコレクター宮津大輔氏の協力を得たいと考えていました。宮津氏が台湾のアートフェア「ART KAOHSIUNG」に登壇すると聞き、当時のディレクター香月人美氏や井上雅也氏らとともに高雄へ渡航。直接の対話を経て、AFAFへの協力を快諾いただきました。これも、AFAFが国際的な広がりを模索する中で大きな一歩となりました。
2019
初の2拠点開催
異例の挑戦と拡がる可能性
この年のAFAFは、これまでのホテル開催に加え、三越の催事場を活用した2拠点開催に踏み出しました。百貨店とギャラリーが肩を並べてアートフェアを行うという形は、当時の日本では極めて珍しい試みであり、多くの注目を集めました。通常、百貨店でのアート販売はギャラリー名を前面に出さずに行われるのが一般的でしたが、AFAFではあえてその垣根を取り払い、ギャラリー主体での展示を実現したのです。そこには、アートをより開かれた形で市民に届けたいという強い思いが込められていました。
結果として、ホテルの落ち着いた空間と百貨店の持つ賑わいが相乗効果を生み、これまで以上に多様な来場者を惹きつけることにつながりました。福岡という都市から新たなモデルを提示したことで、アートフェアのあり方や発信の可能性が大きく広がった一年だったといえます。この異例の挑戦は、その後のAFAFの発展にもつながる重要な布石となりました。
2020
中止の年
悔しさを抱え歩みを止めた一年
2020年は、新型コロナウイルスの影響により、やむなく開催を中止。積み重ねてきた歩みを止めざるを得なかったことは、大きな悔しさとして胸に刻まれました。オンラインでのつながりが模索される中で、やはりアートフェアは対面でこそ成り立つ場であり、人と作品が直接出会う瞬間にこそ意味があるのだと痛感した年でもありました。この経験は、次の開催への強い原動力となりました。
2021
デジタル施策拡充
逆境が生んだ創意工夫
AFAFは依然として新型コロナウイルスの影響が続く中での開催となりました。ホテルと博多阪急での2拠点展開に加え、これまでにない新たな挑戦に次々と取り組んだ年でもあります。
会場に足を運べない人々に向けて、オンライン販売の仕組みを導入し、ギャラリーや作品の情報を事前に公開。さらに、現地の雰囲気を伝えるオンラインツアーの配信や、臨場感を体感できるVR空間の構築など、従来のフェアの枠を越える試みを積極的に実施しました。
これらの挑戦は、単なる代替手段にとどまらず、アートに触れる入口を広げる可能性を示すものでした。困難な状況下であっても歩みを止めず、時代の変化に応える柔軟な姿勢を示した2021年は、AFAFにとって次の展開へつながる大きな転機となったのです。
2022
初の共催化
福岡市とともに歩む、進化の年
2022年、AFAFは福岡国際会議場とホテルオークラ福岡の2会場で開催され、フェアの規模と存在感は一層拡大しました。特に注目を集めたのは、初のキュレーションブースの誕生です。アジアを代表する作家を紹介する「Leading Asia」が幕を開け、AFAFが単なる展示の場を越えて、アジアの現在を映し出す舞台へと進化したことを示しました。
さらに、この年は福岡市との共催が実現した節目の年でもあります。行政とアートフェアが連携することで、「Fukuoka Art Next(FaN)」が始動し、都市をあげてアートを推進する動きが本格化しました。その取り組みの一環として「FaN Week」がスタートし、街全体がアートの熱気に包まれる空気が広がりました。加えて「アーティストカフェ福岡」も誕生し、若手や地域のアーティストが活動を発信する新たな拠点が築かれました。
都市全体がアートに染まり、福岡が本格的に「アートの街」として歩みを加速させた一年。それが2022年でした。
2023
マリンメッセ移行
新しい舞台への挑戦
2023年、AFAFはついに長年続けてきたホテル形式から大きく舵を切り、マリンメッセ福岡B館を舞台に開催されました。客室を会場とするホテルフェアから、より大規模で本格的なブース型フェアへと進化を遂げたことは、AFAFにとって歴史的な転機となりました。
広々とした展示空間は、これまで以上にダイナミックな演出や多様な展示を可能にし、来場者に新鮮な驚きと体験をもたらしました。同時に、ブース型フェアへの移行は、国内外のアートフェアの潮流とも呼応し、AFAFが国際的な舞台に並び立つための大きな一歩となったのです。
街全体の熱気と市民の後押しを受けて、AFAFの存在感はさらに拡大しました。福岡という都市が持つ「アジアの交差点」としての力を背景に、新しい舞台へと挑んだ2023年は、AFAFが次の10年に向けて歩みを進めるための重要な出発点となりました。
2024
特設ブース設置
多彩な企画で魅せる、進化のステージ
2024年、AFAFは会場を福岡国際センターへと移し、さらなる規模の拡大と内容の充実を実現しました。広大な展示空間を活かし、国内外のギャラリーがより大きなスケールで集結。福岡発のアートフェアが、国際的な舞台へと一層近づいたことを示す開催となりました。
この年の大きな特徴は、特設ブースの新設です。20世紀美術の巨匠たちの名作を紹介する「Masters」や、新進気鋭の若手アーティストに光を当てる「First Collection」が登場。歴史に刻まれる名作から、未来を担うフレッシュな表現までを一度に体感できる構成は、来場者に強い印象を残しました。
10回目を目前に控えた節目の開催にふさわしく、過去と未来をつなぐ多彩なラインナップが揃った2024年。アートフェアとしての厚みを増すと同時に、次の時代への期待を大きく高めた一年となりました。
2025
今年度
記念すべき10回目の開催ーAFAF 10th Edition
2025年、アートフェアアジア福岡はついに記念すべき10回目を迎えます。2015年の誕生以来、この舞台には延べ数百のギャラリー、数千のアーティストが集い、数え切れないほどの出会いや対話を生み出してきました。福岡という地から発信される挑戦は、アジアと世界のアートシーンをつなぐ架け橋として、確かな存在感を築いてきたのです。
10回という節目は、これまで支えてくださったすべての人々への感謝を胸に刻むとともに、未来への扉を開く新たな出発点でもあります。今年は「AFAFアワード」も始動し、福岡からアートのプロを志す人々を力強く後押しする試みを展開。街と人とアートが交差する場として、さらなる広がりを目指しています。
福岡から世界へ――。これまでの歩みを力に、次の10年、その先の未来へ。AFAFはこれからも希望と熱意を携え、開かれたアート交流の舞台を築き続けます。
このたび『ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025』が記念すべき10回目の開催を迎えられること、代表理事として、そしてアートと福岡を愛する一人として、大変嬉しく思います。これまで支えてくださったギャラリー関係者、アーティストの皆様、ご協賛・ご協力 関係者様、そして来場者の皆様に、深く御礼を申し上げます。 AFAFは、2015年の立ち上げ以来、“アジアと日本をつなぐアートフェア”として、時代 や社会の変化を受け止めながら、挑戦を続けてきました。 10年という節目を迎える今年は、まさに“進化の年”です。100を超えるブースに加え、 『Moment』『Infinity』といった新たな表現の場、そして数年ぶりに復活した公募展『AFAF AWARD powered by E.SUN BANK』を通じて、これまで以上に多様で、熱 量のあるアートの交差点をつくり出します。 私たちは、アートがもたらす価値をもっと広く、もっと深く社会に届けていきたいと考えています。福岡という街から発信するこのフェアが、アーティスト、コレクター、そしてまだアートに触れたことのない人々にとって、心を揺さぶる出会いの場になることを強く願っています。」